鎌倉 杉浦トマト

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 鎌倉の北部、関谷の農業振興地域のハウスでは、杉浦さんのトマトが絶好調で育っている。近隣のレストランで売れっ子の鎌倉野菜の中でもトマトは味も価格も代表格。サラダのスターで、生でも加熱でもOKの西洋料理の必需品だ。

鎌倉野菜は、京野菜の聖護院かぶら、京にんじんのように伝統的な特別の種類があるわけではない。約100年近く前、欧米のファーマーズマーケット式の市場(レンバイ)が鎌倉の中心にできて、農家が直接消費者に農作物を売り始めた。以来、スーパーや生協に卸したりと多少販路が異なる農家はあっても、販売に仲卸をほとんど通さないスタイルが鎌倉に定着した。

そのため消費者と生産者の距離が近くて、消費者のリクエストにこたえたサラダ向けのフレッシュで色鮮やかな野菜を農家が作ることが多くなった。これが鎌倉野菜の大きな特徴だ。

広々とした杉浦さんのハウスに、ゆったりと間隔を取って植えられているトマト。ハウス内では扇風機が動いて空気の流れを作っている。ラジオからの音楽まで聞こえる中、鎌倉野菜の代表格の「サラダのスター」は日差しを目いっぱい浴びて、ほんとうに気持よさそうだ。

トマトの原産地はアンデス高地。雨の少ない気候、やせた土地と強い日差し、気温の寒暖差が、現在のトマトの原型を生んだ。そのため雨など水分の多さや、密集させる栽培は、病気や味の劣化などの原因になるのだそうな。

高温多湿の日本では、ハウス栽培だと雨が当たらない・寒暖の差がおこせる・害虫が少ない・病気が起こりにくいという点でメリットが大きいのだとか。露地栽培より原産地に近い状態になるので本来の良さが出ると聞いて、感心しつつ納得。

1s3a7939そんなハウス栽培のなかでも、杉浦トマトは特別だ。

タイミングをはかって畝の間隔を広く取っての苗つけ、肥料やり。この時期や間隔で病気がかなり抑えられるのだそうだ。

茎が伸びるとハウスに上手にひもを渡して支柱の代わりに。茎とひもをつなぐのは洗濯バサミ、身近な生活用品が農業用に大活躍だ。消毒はするものの農薬は最低限で、虫が出やすい時期になるとハエ取り紙を利用する。花が咲くとそのハエ取り紙も退場し、ハウスの中では働き者のハチが受粉のために活躍するのだ。

1s3a7937根を張らせるために水分を減らす、茎がすくすく伸びるように葉や余計な枝や実を間引く、つかまりやすいように支柱を入れる。ハウスのドアは目の細かい布で2重にして外部の虫や病気を入れない。一見すると手間いらずのハウス栽培も、観察するとたくさんのノウハウ(技術)と絶え間ない手入れの結晶なのだと理解できる。

味を濃くするために水分は少なめに与え、中玉ぐらいの大きさで収穫する。少し黒味を帯びた赤い色は、糖度の高いゼリー質の多さを表し、すんなりとした形、のびやかな育ち、なにより甘さも酸さも濃い味が、作り手の情熱を伝えている。

「根が伸びて強く張って、茎が気持ちよく伸びて、青いトマトの実が地面に近いところから順番に赤くなってくるのをみるとうれしい。大満足なんだ。」シャイな杉浦さんがトマト作りについてちょっとだけ語ってくれた。今年のトマトは「大満足」のデキのようだ。

こんな杉浦さんのトマトはフジスーパー(富士シティオ)大船店で購入可能(夜には売り切れちゃってます、買い物はお早めに)。今夜は我が家もトマトづくしの夕食になりそうだ